父は暴力団密接交際者!?

貧しい環境で育ったヤクザ

(まさか父は暴力団密接交際者!?)
 しかし父の話を聞くと、そういうことではありませんでした。

 これは私が生まれるずっと前の話です。
 父はとても貧しい家で生まれ育ちました。貧しい人達が肩を寄せあって暮らすそんな地域です。その時、隣に住んでいたのが鶴川(仮)さんだったのです。
 鶴川さんの家は母子家庭でした。
 母親と障害のある弟、そして幼い妹を食べさせるため、鶴川さんは亀山(仮)さんの盃を受けてヤクザになりました。
 鶴川さんと私の祖父母は仲がよく、父は鶴川さんの妹と同級生でよく遊んだそうです。

 そうこうするうちに父は母と結婚し、が生まれました。
 でも私が一歳の時に私の祖父は病気で他界してしまいます。

極道BL小説:ヤクザが葬式を仕切っていた

 すると、連絡もしていないのに葬儀屋が我が家に駆け付けたのです。
 葬儀屋さんはこう言いました。

「鶴川さんの言いつけで、うちが葬儀の段取りを全てやらせてもらうことになりました」

 アマノさん(亡くなった私の祖父)には普段から世話になっているから、最期までちゃんと面倒を見てやって欲しいと、鶴川さんは葬儀屋に言ったそうです。料金は破格の安さでした。
 実は、私の祖父は度を越したお人好しで、町内の世話役のようなことを勝手に(笑)していました。
 当時はみな貧しくて病院にも行けず、道端でそのままばったり倒れて亡くなる人が多かった。祖父は、そんな道端で亡くなってしまった人の遺体を背負って家まで運んであげたり、葬式の最中に火事になった家があれば、火事場の後始末が終わるまで遺体を自分の家で預かるような人でした。
 父の結婚費用にと祖母が貯めていたお金を、困っている人に勝手にあげてしまうようなところもあって、祖父と祖母は喧嘩が絶えませんでした。そんな旦那さん、私でも嫌です(笑)。
 でも鶴川さんは、そんなお人好しな祖父のことが好きだったのでしょう。鶴川さんのお陰で祖父の葬儀は盛大に行われました。
 その後、父の仕事の関係で我が家は引っ越し、鶴川さんとの縁はそれっきりになってしまいました。

 父からそんな話をつらつらと聞いているうちに、私はヤクザについてもっと知りたくなっていきました。

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暗黒官能極道BL小説「デビル・クロニクル」の作者・天野佑海(アマノユウ)です。こちらのブログでは、本作の背景やその他エピソードをご覧いただけます。書籍と合わせてみると一層楽しんでいただけると思います。お気軽にコメントをどうぞ。よろしくお願いいたします。